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千と千尋の神隠し】幻のエンディングに関する都市伝説の素晴らしさ-記憶の捏造という妙技-

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「千と千尋の神隠し」は2001年に公開された宮崎駿監督による劇場用アニメーションである。

スタジオジブリの作品には様々な都市伝説が存在しており、このブログでも考察と称して都市伝説みたいなことを書いていたりもする。

また、都市伝説というと「正しいか正しくないか」、「信じるか信じないか」という文脈で語られることが多いですが、個人的に思う都市伝説の重要ポイントは「面白いか面白くないか」である。

そのような観点で見たときに、スタジオジブリの都市伝説でぴかいちの面白さを誇っているのが「千と千尋の神隠し 幻のエンディング」である。

今回は都市伝説の概略を振り返りながらその面白さを考えていく。

*以下の文章は「幻のエンディング」は幻であって存在していないという前提に立っています。

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千と千尋の神隠し」の幻のエンディング

都市伝説の概略

まずは我々のよく知る「千と千尋の神隠し」エンディングを思い出してみよう。その内容は以下の通りである:

千尋が車の中で来る前に着けていた髪留めが銭婆から貰った髪留めに変わっていることに気が付き不思議がる(何故かは覚えていない)。

新居に向かう途中、丘から引っ越し業者が既に到着しているのが見え母親が「もう業者さん来ちゃってるじゃないのー」と父親に怒る。

新居に到着後、引っ越し業者の1人から「遅れられると困りますよー」と注意される。

千尋が1人何気なく新居の周りを歩いていると短い橋の架かった緑ある小川があることに気付く。

橋から川を眺めていると千尋は一瞬ハッと悟ったかのような状態になりこの川がハクの生まれ変わり、新たな住み処であることに気付いた?かのように意味深に物語が終わる

どうだろうか、実はこのエンディングこそが「幻のエンディング」として名高い都市伝説そのものである。元となっているの2014年の2ちゃんねるのスレッドと思われる。私自身も随分昔にまとめサイトでこのエンディングを見たことを覚えている。

実際のエンディングはもっと簡素なもので、以下のようになっている:

千尋と両親がトンネルを出るとそこには何故か木の葉で覆われた自動車があった。車に向かいう両親と対象的に、何かを思い出すようにトンネルを振り返る千尋。不意に父に呼ばれて我に返ったように車に千尋が乗り込むと、三人を乗せた車は走り去っていく。

実際のエンディングはこのようなもので、引越し業者も小川も出てこない。そしてむしろ「こんなんだったったけ?」と疑問に思ってしまうほどに簡素である。

ただ、トンネルのむこうで発生したことを基本的には忘れてしまっているという切なさと、銭婆からもらった髪留めが光る表現によるある種の希望があのラストの醍醐味とはなっている。

でだ、私にとってこの「幻のエンディング」はとっても面白い都市伝説なのだが、何がそんなに面白いのだろうか?

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都市伝説の面白さ

この都市伝説の最大の面白さは、存在しないはずの映像が完璧に自分の脳内で再現されてしまうことにあるだろう。

そして、我々の脳内に存在しないはずの映像が再現されてしまうのは、その構造の狡猾さにある。つまり、次にまとめるように、この都市伝説は本当に存在しているシーンや映像を巧みに利用している:

  • 引っ越し屋さんは描かれていないが、序盤の車の中で引っ越し屋さんに言及はしている。
  • 道を一つ間違えて、引っ越し先を見上げるシーンは存在している。
  • ラストに川は描かれないが、千尋の回想シーンに川は登場する。

この「幻のエンディング」を最初に言い出した人間が誰かは分からないのだが、その人物は人間の記憶というものを深く理解しており、その上で優れたライティング技術を有した人物ということになるだろう。

「トトロは死神だった」といったタイプの都市伝説とは一線を画する高尚さがあると私は思う。


これで「千と千尋の神隠し」の「幻のエンディング」についての話は終わりなのだが、このトピックスに関連していつも思い出してしまう私の個人的な記憶の捏造があるので、それについても紹介していこうと思う。

   

捏造される記憶達

ターミネーター2

映画「ターミネーター2」の序盤、里親を心配したジョン・コナーが養母に電話をかけるシーンで、すでにT-1000にコピーされていた養母がジョンと電話をしつつ自分の夫を殺す様子が描かれる。

実際のこのシーンではT-1000の左腕が剣状になって夫の頭を大きく貫いているのだが、私の記憶の中では人差し指が鋭く針のように伸びて脳天を差しているシーンになっていた。

重要なことはこれにも明確に理由があるということで、物語の終盤でサラ・コナーがT-1000に右肩を刺されるシーンが描かれるが、それがまさに長い針のように伸びた人差し指によるものだった(これもとても印象的なシーン)。

つまり、実際に存在するシーンが頭の中で渾然一体となり都合の良いものを作り上げていたということになる。

もしかしたら、T-1000がジョンの養父を殺すシーンについて「人差し指が針のように伸びてたよね」というと「そうだったな!」という返答が返ってくるかもしれない。

人間の記憶はやはり危ういものである。

機動警察パトレイバー2

映画「機動警察パトレイバー2」の中にも、自ら捏造したシーンがあって驚いたことがある。

主要登場人物の一人である南雲しのぶがエレバーターに乗るシーンで、黄色い服を着た女の子も小走りに同乗してくる。

私は長いことこの女の子が赤い風船を持っていると思い込んでいたし、今でも偽りの記憶を鮮明に再生することが出来る。しかし、実際には風雨など持っていない。

この赤い風船の出どころは、「機動警察パトレイバー」のOVAシリーズにある「雪のロンド」という話になる。この物語の中では赤い風船が印象的に描かれており、とある女性が赤い風船を持っているシーンが描かれる。

何故か私はこの2つの事柄を混同し、一つのシーンとしてでっち上げていたのである。

「機動警察パトレイバー2」にしても「雪のロンド」にしても雪が印象的に描かれているという共通点があり、そういったことも記憶の捏造に寄与したのだと思う。記憶の捏造にはなにかしらの必然性があるのだろう。


以上が「千と千尋の神隠し 幻のエンディング」の概要とそれに付随して考えたことの全てでございます。この都市伝説の素晴らしさはもちろんその面白さではあるのですが、人間の「記憶」というものは極めて危ういもので操作可能なものであるという事実を教えてくれることにもあると思います。

記憶を大切にしましょう。難しいことですが。

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Sifr(シフル)
北国出身横浜在住の30代独り身。日頃は教育関連の仕事をしていますが、暇な時間を使って好きな映画やアニメーションについての記事を書いています。利用したサービスや家電についても少し書いていますが・・・もう崖っぷちです。孤独で死にそうです。でもまだ生きてます。だからもう少しだけ生きてみます。
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