「天気の子」は2019年に公開された新海誠監督による劇場用アニメーション作品である。
今回は「天気の子」の登場人物と声優を振り返りながら、それぞれの魅力や物語について考えていこうと思う。「天気の子」の登場人物はどんな人々だったのだろうか?
以下の文章では不意にネタバレが挟まれますので、その点はご注意ください。
「天気の子」の登場人物と声優の基本情報とキャラクター考察
森嶋帆高|声優:醍醐虎汰朗
森嶋帆高(もりしまほだか)の基本情報
物語の主人公。島津島高校一年生の彼が、東京本土に家出をすることから「天気の子」は始まる。
本編中彼の家での理由が明かされることはなかったが、一瞬写真で見切れていたあからさまに気難しそうな父親との対立が原因ではあるだろう。
ではどのような対立だったのか?ほとんどヒントなしの状態で想像すると、候補は以下の2つくらいしかないと思われる:
- 大学進学に関する対立
- 就職に関する対立
完全に背反な事柄ではないが、概ね父親と対立する内容なんてこんなものだろう。
神津島村役場のオフィシャルサイトを調べてみると、主な産業は「漁業」「農業」「観光」とあり、特に「漁業」が盛んとある。となると、帆高の父もこれらの仕事をしていた可能性は高く、何れにせよ「大学などいかず後を継ぐ」ということが求められそうではある。
そのことで取っ組み合いの大喧嘩をし、帆高は家出を決断したものと思われる。農業や漁業に携わっていたとなると腕っぷしも強かったと思われるので、帆高は相当に劣勢な戦いを強いられたことだろう。
結果的に帆高は大学進学を達成している。どう考えてもあの家出の影響で獲得した機会だったと思うが、親としても「家出されるよりはまし」と思ったかもしれないし、あの大冒険の日々を乗り越えた帆高が一端の男に写ったのかもしれない。
まあ、あれだけ色んなことを体験すれば、帆高としても人間的成長をせざるを得なかっただろうし、それは周りの人々にも伝わったのだろう。困難の多い旅立ちだったが、帆高個人としては実りの多い日々だったと言えるのだろう。
ちなみに、帆高のふるさとである神津島(こうずしま)には「水配り伝説」なる神話が受けつがれている。内容はだいたい次のようになっている:
出雲の神である事代主命(ことしろぬしのみこと)は、出雲の神々を引き連れ現在の伊豆にたどり着き「島作り」を行い伊豆の島々を創造した。その島々に対する水の分配(水配り)に関する会議が神津島で行われたが、その会議は紛糾し結論が出なかった。結局、翌朝に神津島に到着した各島の神々の先着順によってその分配を決定することにした。結果、御蔵島、新島、八丈島、三宅島、大島の順に分配がなされたが、寝坊した利島の神がすでに僅かな水しか残っていないことに怒り、僅かに残った水に飛び込んで大暴れをした。その水が司法に呼び散ったことから神津島には今でも水の豊富な島となっている。
この神話を「天気の子」と絡めるのは少々難しいかもしれないが、帆高も「水」にまつわる神話を持つ島の生まれであったことは覚えておいても良いかもしれない。
声優の醍醐虎汰朗さん
声を担当したのは俳優の醍醐虎汰朗さん。声優としては「天気の子」が最初の作品となっている。
帆高のもつある種の「必死さ」が伝わってくる名演だったと思う。
天野陽菜|声優:森七菜
天野陽菜(あまのひな)の基本情報
「天気の子」の中心を担う超常の力を持った少女。本編が始まった時点では中学3年生だったが、帆高には次の誕生日で18歳と嘘をこいて見事に騙しきった。
物語の序盤ではその力を「100%の晴れ女」として活用し、自分の生き方や居場所を見つけた高揚感の中にあったが、その力が自らを滅ぼしてしまうことを知り物語は展開する。
この「天気を操作する能力」が「天気の子」という物語を強く推進するわけだが、「病床にあった母に晴れた空を見せてあげたい」という思いがこの超常の力を発現させたようである。
ただ・・・「天気の巫女」なる存在が「天気の子」の世界には存在していたらしく、それを前提にすると、陽菜はその一族の末裔だったと考えるのが自然になると思われる。
「天気の子」の本編中にはそれを示唆する描写は一切ないとは思うが、陽菜が母のブレスレットをネックレスとして大切にしている描写を考えると、何かが受け継がれたという暗示にも見える。
少々行き過ぎた想像力を働かせると、ブレスレットだったはずのものが首に巻かれているということは、それが陽菜をひどく縛り付けるくさびになってしまうことの表現だったようにも見える。
「天気の巫女」の力は間違いなく人知を超えた力だが、それは「魔法」というよりは「呪い」という表現が正しく機能するように本編でも描かれていた。一度その力を使ってしまえば、その本人も、そしてその周りにいる人々も、その力から逃れることができない。
「天気の子」における陽菜は、結果的にそういった楔を最後に受け継いだ存在であり、その楔を振り切った存在であったと言えるかもしれない。
こういった「天気の巫女」については色々と想像を巡らすことができるので、以下の記事でもう少し妄想を膨らませている:
「天気の巫女」とはどんな存在であったのだろうか?
声優の森七菜さん
声を担当したのは俳優の森七菜さん。アニメーションの声優としては「天気の子」の天野陽菜役が最初となっている。
天野凪|声優:吉柳咲良
天野凪(あまのなぎ)の基本情報
天野陽菜の弟で小学5年生。この年にして彼には複数の彼女がおり、元カノも存在するませたガキである。帆高にとってそんな凪は恋愛の師匠である。
作品中では「コメディーリリーフ」を演じることも多かったが、基本的にはポーカーフェイスな斜に構えた人物として描かれている。それも姉との二人での生活という特殊状況が作ったもので、否応なしに「大人」になってしまったということなのだろう。
そんな凪が物語の終盤で「全部お前のせいじゃねぇか。姉ちゃんを返せよ!」と叫んだあのシーンで、彼はようやく等身大の自分に戻ることができたのではないだろうか。
声優の吉柳咲良さん
声を担当したのは俳優の吉柳咲良さん。アニメーションの声優としては「天気の子」以外にも「かがみの孤城」のアキ役も担当している。
須賀圭介|声優:小栗旬
須賀圭介(すがけいすけ)の基本情報
有限会社K&Aプランニングの経営者。雑誌に記事を寄稿することで生計を立てているようである。
本編中で言及はなされていないが「K&A」の「K」は圭介(Keisuke)の「K」、「A」は死別した明日花(Asuka)の「A」でまず間違いないだろう。
そんな彼はフェリーで帆高の命を救ったことによって物語に巻き込まれていくこととなる。
物語の最後の最後まで、圭介は「うだつの上がらない大人」として描かれており、それが原因で娘と会うことすら一苦労の状態になっている。その原因は義理の母であり、色々と理由をつけて孫を圭介に会わせないようにしているのだが、いわゆる「意地悪」ということではなく、妻を失ってからの圭介が抱える精神的な危うさに気づいているということなのだろう。
ただ、基本的にはものすごく面倒見が良い人物で、彼の存在なかりせば、帆高は行き倒れになっていたに違いない。声優の小栗旬さんの演技も相まって「良い兄貴分」という雰囲気がでた人物であった。
声優の小栗旬さん
声を担当したのは俳優の小栗旬さん。多くの作品に出演している方だが、アニメーションの声優もいくつか担当しており、2013年に公開された「キャプテンハーロック」では主役のハーロック役を担当している。
個人的には実写版の「銀魂」や「ルパン三世」での小栗さんも非常に好きである。
「天気の子」では圭介のもつ「面倒見の良さ」がよく出ていおり、現場でも若い俳優さんにとっての良い兄貴分役だったようである。
須賀夏美|声優:本田翼
須賀夏美(すがなつみ)の基本情報
圭介の義理の妹nの大学生。「K&Aプランニング」でバイトをしている。
物語の中盤まで帆高からは「圭介の愛人」と勘違いされていたが、就活中の大学生のお姉さんがさぞかし妖艶に見えたのだろう。
非常に明るい性格をしてはいるが、実際には就活に苦戦している。最終的にどうなったかについての言及はなされていないのだが、物語のラストで再び描かれる新生「K&Aプランニング」のオフィスに夏美のヘルメットが描かれており、どうやら圭介の会社に就職したようである。
声優の本田翼さん
声を担当したのは俳優の本田翼さん。
新海作品では事前に「ビデオコンテ」が作られる(絵コンテに新海監督自ら声を入れたもの)。声優も基本的にはそれが元になって演技を刷ることになる。主役の醍醐さんと森さんにかんしては「よく見てくれたと感じた」という新海監督だったが、本田さんに関しては「ビデオコンテ見ましたか?」と質問を投げかけるほどに思いがけない演技になっていたようである(参考:新海誠監督『天気の子』ビデオコンテを語る)。
須賀明日花
須賀明日花(すがあすか)の基本情報
圭介の妻。娘の萌花を生んだあと事故で亡くなっている。
本編中では全く描かれていないが、物語序盤の圭介のぼやけた状態を見るに、彼にとっては相当大きな存在であったことがうかがえる。
須賀萌花|声優:香月萌衣
須賀萌花(すがもか)の基本情報
圭介の娘。
母である明日花の死後、祖母の家で預かられている。
喘息を患っており、雨の降る日は体調が悪いようである。そんなこともあり、祖母は喫煙者である圭介にあまり会わせようとはしていない様子も描かれていた。
声優の香月萌衣さん
声を担当したのは香月萌衣さん。「天気の子」公開当時は7歳であった。
間宮夫人|声優:島本須美
間宮夫人(まみやふじん)の基本情報
圭介の義理の母。
現在は圭介の娘の萌花を引き取っている。本編中では圭介が喫煙者であることを理由に喘息をもつ孫にあわせることを渋っている。ただ、少々うがった見方をすると、どこかに「可愛い娘を奪った男」という思いもあったのかもしれない。一般的には父親が抱く感情ではあるのだが、かわいがった娘であれば別におかしな感情ではない。その上非業の死を遂げている。死因は事故だが「あの男と結婚していなければ」という思いがあってもそこまで責められるものではないかもしれない。
声優の島本須美さん
声を担当したのは島本須美さん。「カリオストロの城」のクラリスや「風の谷のナウシカ」のナウシカなど、多くの作品で声を担当した人物である。
立花冨美|声優:倍賞千恵子
立花冨美(たちばなふみ)の基本情報
「晴れ女」として陽菜と帆高が仕事を受け取った相手。
前作「君の名は。」の主人公であった立花瀧の祖母であるが、基本的には「パラレルワールド」的な視点で見るのが良いと思われる。
また、物語のラスト付近で水没した東京の惨状の中で「なんやかんや人は生きて行くものだ」と帆高に語りかけていた。地味なシーンではあったが、「天気の子」における重要なメッセージであったと思う。
声優の倍賞千恵子さん
声を担当したのは俳優の倍賞千恵子さん。アニメーションの)英雄としては「ハウルの動く城」のソフィー役が印象に残っている。「天気の子」においても物語のラスト付近で帆高に大切なことを伝える役となっている。
安井刑事|声優:平泉成
安井刑事(やすいけいじ)の基本情報
帆高が物語の序盤で発生させた銃発砲事件を追う中年刑事。「天気の子」に登場する「大人」の中で最も安定した人物である。
声優の平泉成さん
声を担当したのは俳優の平泉成さん。ものまね芸人のせいかなのか、平泉成さんといえば「人情刑事役」というイメージがあるが、「天気の子」ではまさにその役を演じてくれた。
高井刑事|声優:梶裕貴
高井刑事(たかいけいじ)の基本情報
安井刑事の相棒の若手刑事。
わざわざリーゼント姿であることを考えると昔はやんちゃしていたタイプということだろうか。きっと安井刑事の世話になったんだね。
声優の梶裕貴さん
声を担当したのは声優の梶裕貴さん。数多くの作品で主役あるいや主役級の声を担当する売れっ子声優である。
佐々木巡査|声優:市ノ瀬加那
佐々木巡査(ささきじゅんさ)の基本情報
物語の終盤、見事に凪に逃げられてしまった婦警。流石に入れ替わりを想定することはないだろうから責められないだろう。
声優の市ノ瀬加那さん
声を担当したのは声優の市ノ瀬加那さん。他にも知っている作品で声を担当していないかと探してみたら「メイドインアビス 烈日の黄金郷」のマアアさんの声を担当していた。
アヤネ|声優:佐倉綾音
アヤネの基本情報
凪の元カノ。凪の初登場シーンで最初にバスで会話をしていた女の子。
声優の佐倉綾音さん
声を担当したのは声優の佐倉綾音さん。2010年ころから多くの作品に主演している方で、個人的には「有頂天家族」の海星と「進撃の巨人」のガビが印象に残っている。
カナ|声優:花澤香菜
カナの基本情報
凪の今カノ。凪の初登場シーンで二番目にバスで会話をしていた女の子。
声優の花澤香菜さん
声を担当したのは花澤香菜さん。言わずとしれた有名な声優さんだが、新海作品の常連でもあり「言の葉の庭」、「君の名は」、「すずめの戸締まり」に出演している。
スカウトマン木村|声優:木村良平
スカウトマン木村の基本情報
物語の序盤、雑居ビルの入り口で雨宿りをする帆高に足をかけて転ばすという信じがたい行動をとった人物。転ぶ帆高をあざ笑うような人物だったが、きっと彼にも色々あるのだと思うじゃないか。
その後、帆高は陽菜を店に勧誘するスカウトマン木村に再会、とっさに陽菜を連れて逃げ出したもののとっ捕まり、追い詰められた挙げ句に偶然発見した銃を発砲する事件を発生させる。
あの発砲事件が帆高にとってのある種の「段落」となったことを考えると、いい仕事をしたと言えるかもしれない。
声優の木村良平さん
声を担当したのは声優の木村良平さん。個人的には「東のエデン」の滝沢朗役で最初に認識したと思う。その他にも「黒子のバスケ」の黄瀬涼太など多くの作品で声を担当している。
占いオババ|声優:野沢雅子
占いオババの基本情報
帆高が「K&Aプランニング」が働き始めた頃に取材に行った占い師。矢継ぎ早に如何わしい発言を繰り返したが、その実「天気の子」で語られることのなかった「晴れ女」についての概説となっている。
声優の野沢雅子さん
声を担当したのはみんな大好き野沢雅子さん。極めてちょい役立ったが、そのセリフの内容の濃さを考えれば野沢さんを投入する価値があったということだろうか。
荒木研究員|声優:荒木健太郎
荒木研究員の基本情報
帆高と夏美が取材した気象庁の研究員(研究官)。雲の中なの生態系について雄弁に語っていた。
声優の荒木健太郎さん
声を担当したのは映画の監修をした気象庁気象研究所の研究員荒木健太郎さん。早い話が本人役である。私は映画を見た後勢い余って荒木さんの著書「雲の中では何が起こっているのか(PR)」を買って読んでしまった。
神主|声優:柴田秀勝
神主の基本情報
圭介と夏美が取材に訪れた「気象神社」の神主。
「異常気象」の「異常」という表現が何に人間の都合によるものであり、しかもたかだか我々の記録に残っているものと比較して「異常」と煽っているだけであると主張する。私も全くもって同意するが、「天気の子」という作品の自然感を表現してくれた人物である。
声優の柴田秀勝さん
声を担当したのは声優の柴田秀勝さん。1960年代からアニメーションの声優をこなしており、「マジンガーZ」のあしゅら男爵、「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙」のデギン・ザビ(TV版やその他で声優は異なる)の声の人である。
前作「君の名は」からの登場人物
- 立花瀧|声優:神木隆之介
- 宮水三葉|声優:上白石萌音
- 勅使河原克彦|声優:成田凌
- 名取早耶香|声優:悠木碧
- 宮水四葉|声優:谷花音
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