「銀河英雄伝説」は今なお私にとって特別な意味合いを持つアニメーション作品である。「Die Neue These」という形で2018年以降にリブートされているが、私が愛してやまないのはやはり、1988年から開始されたOVA作品である(リブート版も面白いけどね)。
今回は「銀河英雄伝説」の登場人物「コルネリアス・ルッツ」の思い出について語ろうと思う。彼は私に「死亡フラグ」を一番最初に見せてくれた男なのだ。
ルッツ提督の作中における生涯
「コルネリアス・ルッツ」は旧銀河帝国、新銀河帝国の提督である。物語の序盤ではキルヒアイスの指揮下で、アムリッツァ会戦、リップシュタット戦役を戦った。
ラインハルトによる新帝国の樹立後は、イゼルローン要塞の防衛、フェザーン警備司令官などを歴任するものの、イゼルローンはヤンに奪還され、フェザーンでは爆弾テロにあるなど「不運の男」でもあった(以前の上官であったキルヒアイスも失っている)。
そんな折、帝国内部がラング(あるいは地球教)の作戦にはまって「ロイエンタールの謀反の疑い」に揺れに揺れた。しかしそこはさすがのラインハルト。彼は帝国内の「行幸」を宣言し、自らロイエンタールに会いに行く道を選んだ。もともとラングの動向に疑いを持っていたルッツは、「妹に会いに行く」という言い訳を作りラインハルトの「行幸」に同行することとなる。
旅の途中ラインハルト一行は惑星ウルヴァシーに立ち寄る。そこはすでに地球教の手が回っており、そこにいた帝国軍の兵はラインハルトに反旗を翻し、ラインハルト抹殺のために圧倒的多数の兵を投入する。ウルヴァシーからの脱出を試みるラインハルト一行であったが、敵の追従が激しく、窮地に陥っていた。それでもなお旗艦ブリュンヒルトまであと僅かというところで、ルッツはその場に留まって敵を食い止めることを提言する。
もちろんラインハルトはそれを止めたが、結局かれは「生きて帰り、元帥杖を頂く」という約束をしてその場に残ることとなる。ルッツは射撃の名手であった。だからこそその場に残ったし、実際幾人かの敵を射殺した。しかし多勢に無勢ではどうにもならず、ルッツはラインハルトとの約束を果たせぬままに息を引き取ることとなる。
以上が「コルネリアス・ルッツ」という男の作中における生涯である。まさに忠臣中の忠臣である。才能豊かな部下を持ったことが、ラインハルトの帝国樹立の重要な要素だったことがわかる。
さて、そんな「忠臣ルッツ」であるが、彼こそが私に人生初の「死亡フラグ」を見せつけてくれた人物である。今思えば随分前からルッツの死は予言されていたようなものだがまだ純真だった私には、そんなこと思いもよらなかった。
ここからは彼の死を悼みつつ、まずは「死亡フラグ」がどういうものであったかをを振り返り、彼が見せてくれた珠玉の「死亡フラグ」を思い出そう。
死亡フラグ
「死亡フラグ」がどういうものかについては以下の例があれば十分だろう
泥沼化した戦争の最前線にいる2人の新兵。
A:「俺、国に帰ったら結婚するんだ。」
見目麗しい女性が映る写真を見せる。
B:「きれいな人じゃないか!どうやって騙したんだ?」
A:「騙しちゃいない。世界で一番愛してるって教えてあげたのさ。」
B:「うるせえよ。だが、そういうことなら死ぬわけにはいかないな。」
A:「そんなこと言って、キサマが死ぬんじゃないぞ!」
A,B:「hahahahahah!」
というやつである。この場合は結局Aは戦死し、彼の形見を持ってBが女性の家を訪ねることになるわけである。このような、これから死ぬ人がよく口にする希望に満ちた言葉、状況のことを「死亡フラグ」と呼ぶ、ということでだいたいあっていると思う。
この死亡フラグはそれほど千差万別なパターンがあるわけではないので、ある程度色んな物語のパターンを見終わってしまうと、フラグがたった瞬間に「あっ、こいつ死ぬんだ」とこちらが気づいてしまうという問題が発生する。
現代的にはそれを逆手に取るということもできるであろうが、いずれにせよ、そのシーンは我々に何かしらのメッセージを伝えてしまうので、作品を楽しむためには少々邪魔な場合もある。
さて、そんな「死亡フラグ」であるが、我らが忠臣ルッツはそのお手本のようなフラグを立てまくってくれたのである。
人生初の死亡フラグ~ルッツの死~
ルッツがその生涯を終えたのは、銀河英雄伝説第92話「ウルヴァシー事件」である。
しかし、彼の死の伏線としての「死亡フラグ」もう少しだけ前、かれが爆弾テロで負傷したところまで戻らなくてはならない。以下、登場人物は、ルッツ、ミュラー提督、皇帝ラインハルトである。
- 銀河帝国が自由惑星同盟の首都星ハイネセンを占領。
- ある程度安定した日々が続いたが、フェザーンでテロが発生。
- ルッツはそのテロで負傷。
- 入院中にとある看護師クララと出会う。
~そこからある程度の時間が経過~
- 銀河帝国皇帝ラインハルトが、ハイネセンに向かう(ルッツが同行した「行幸」)。
- 途中で立ち寄った帝国領の惑星ウルヴァシーで、ラインハルトが軍事的反乱にあう。
- ルッツをはじめ同行した将校は、ラインハルトを脱出させるために旗艦「ブリュンヒルト」に向かう。
- ブリュンヒルトに肉薄したものの、敵の追撃が激しく、ルッツは一人盾となりその場に残ることを決める。
ルッツ: 「俺が残って、やつらを防ぐ。卿(けい)は陛下を守護奉って、ブリュンヒルトに乗れ。」 ミュラー: 「馬鹿なことを仰るな、ルッツ提督!」 ルッツ: 「おいおい、一応私は卿より5歳ばかり歳上なのだぞ。馬鹿はないだろ。年長者の責任を果たすだけだ。」 ミュラー: 「失礼しました!ですが責任は私も同様。しかも卿には婚約者がおいでだ。身軽な私こそ残ります。」 ルッツ: 「右腕を負傷した卿が残って、何の役に立つのだ。」 ミュラー: 「ですが!」 ルッツ: 「卿は卿にしか果たしえぬ責任を果たせ。これ以上形式論を聞かせてくれるなよ。そんなことしたら、謝礼として左腕も撃ち抜いてやるからな。」 ~中略~
- ラインハルトがルッツの手を取る。
ラインハルト: 「ルッツ!」 ルッツ: 「はい、陛下!」 ラインハルト: 「予は、予は死後に卿を元帥に特進させるが如きを望まん。いくら遅れても構わぬゆえ、後から必ず来い!」 ルッツ: 「もとより、将官は生きて元帥杖を手にするつもりでございます。恐れながら陛下とは、建国の労苦をさせて頂きました。ぜひ、今後の安楽と栄華も共に分かち合って行きたいと存じますので。」 ラインハルト: 「ルッツ。銃が撃てなくなったら降伏せよ。」 - 10.ラインハルトはルッツを振り返りながらも、総旗艦ブリュンヒルトに向かう。
上の会話の中にあるルッツの婚約者は、第76話 「祭りの前」でテロに逢ったのちに入院した病院で出会った看護師クララである。
この後ルッツは壮絶な死を遂げることとなる。
「死亡フラグ」としてはミュラーの「しかも卿には婚約者がおいでだ」が決定打になっているが、その後も次から次へとフラグを立てまくっている。あれで死なずに帰ってきたらむしろ「ポカン」である。そもそも、ルッツはテロでの負傷が言えて退院する時に、今回の作戦が終わったら結婚するということを自らの部下に述べている。我々はここで気づくべきだったのである。
いや~しかし、初めて見たときは悲しかったな~。そして今見ても悲しい。
最終的にルッツは複数人からの銃撃をまともに受けることになるが、皇帝ラインハルトを守るべく弁慶の立ち往生をやってのけた。まさに忠臣である。銀河英雄伝説に惹かれる理由の一つは、こういった「忠義のシーン」にもあるだろう。
もちろん、その忠義がラインハルトという稀代の英雄に向いているから、見ていられるのだけれど。
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