「君の名は」は2016年に公開された新海誠監督による劇場用アニメーション作品である。
今回は「君の名は」の登場人物と声優を振り返りながら、それぞれの魅力や物語について考えていこうと思う。「君の名は」の登場人物はどんな人々だったのだろうか?
以下の文章では不意にネタバレが挟まれますので、その点はご注意ください。
「君の名は」の登場人物と声優
立花瀧|声優:神木隆之介
立花瀧の基本情報
物語の主人公の一人。都内の高校に通う高校2年生(17歳)。
イタリアンレストラン「IL GIARDINO DELLE PAROLE」でウェイターのアルバイトをしており、絵がうまい。
彼は夢の中で(あるいは夢を通じて)岐阜県糸守町に暮らす宮水三葉と入れ替わるという不可思議な体験を果たすことになる。
複数回発生したその体験は、糸守町の住民を隕石の衝突から救うという奇跡に収束している。瀧と三葉はまさに英雄なのだが、夢から覚めた二人はそのことを思い出すことはない。
瀧は見事に世界を救ってみせたのだが、そのために失ったものも多かった。彼は三葉と入れ替わりを通じて・・・
- 想いを寄せていたバイト先の先輩との恋を始まる前に終わらされ、
- 過去に戻るために口噛み酒を飲む羽目になり、
- 自らの英雄的な行動を忘れたあげく、
- 「何かが足りない」という欠損を抱えながら物語のラストまで暮らすことになった。
瀧が三葉と入れ替わった事は「偶然」としか言いようがないし、結果的に糸守町の住民を救うことができたのだから正しい入れ替わりだったと言える。しかし、瀧がある意味での被害者であることも間違いはないだろう。
英雄になるとは誠に大変なことである。
声優の神木隆之介さん
声を担当したのは俳優の神木隆之介さん。数多くのテレビドラマや映画に出演している俳優だが声優としても多数の作品に出演している。
例えば、「千と千尋の神隠し」の坊、「ハウルの動く城」のマルクル、「サマーウォーズ」の主人公小磯健二などなど。もはや映像作品を見るとどこにでもいる妖怪のような俳優である。「シン・エヴァンゲリオン」でも重要な声優を努めた事実を認識したときには流石にたまげた。
宮水三葉|声優:上白石萌音
宮水三葉の基本情報
物語の主人公の一人。岐阜県糸守町に暮らす高校2年生(17歳)。
地元の宮水神社の娘であり巫女でもある。母とは幼少期に死別しており、肝心の父はなぜか神社を離れ糸守町の町長をしている。実際の暮らしは妹の四葉、祖母の一葉との三人で営まれている。
都会での暮らしに強い憧れを抱いており、彼女にとって瀧との入れ替わりはまさに夢のような体験だった。更に三葉その状況下、意図せず・・・
- 瀧の恋を始まる前に終わらせ、
- 瀧を自分に惚れさせることによって口噛み酒を飲ませることに成功し、
- 糸守町の住人を救うことに成功した。
この一大事業がほぼ無自覚に行われたという事実は驚嘆すべきことである。瀧は確かに英雄だが、三葉の成し遂げたことに比べれば霞んでしまう。全ては三葉、ひいては宮水遺伝子の手のひらの上のことだったのである。
しかし・・・思い返してみると宮水神社では「組紐」や「神楽」という形で実のところ悲劇の可能性を伝承してきたのだが、今回の入れ替わりという奇跡を必要としたのはその意味合いを忘れてしまっていることに起因する。
そういったことも含め「君の名は」は「失敗(忘却)」と「再生」の物語だったと言えるのかもしれない。この辺の事は以下の記事にもう少し詳しく書いている:
お時間がありましたら目を通してみてください
声優の上白石萌音さん
声を担当したのは俳優の上白石萌音さん。多くの映像作品に出演しており、歌もとても上手い。舞台版の「千と千尋の神隠し」では主役の千尋役を橋本環奈とダブル主演で演じた。
声優としては「おおかみこどもの雨と雪」で雪の友人毛野役なども担当している。
宮水四葉|声優:谷花音
宮水四葉の基本情報
三葉の妹で小学4年生の9歳。場面場面で我々をくすっと笑わせてくれる本作品のコメディーリリーフ。
「君の名は」の序盤、「巫女の口噛み酒」を売り出そうと四葉が言い出した時の「酒税法違反」という三葉の台詞と私自身の心の声がシンクロしたことは今でもよく覚えている。
物語の終盤、三葉と入れ替わっている瀧から「隕石が落ちるから逃げろ」と言われたものの最初は「やばいやばい」とその言葉を信じなかったが、どうやらピンと来たらしく父親のところに住民を避難させるように頼みに行っていることが確認できる。
さすが宮水の血である。
声優の谷花音さん
声を担当したのは俳優、タレントの谷花音さん。「beポンキッキーズ」で認識した人が多いかもしれない。声優としては「夜明け告げるルーの歌」のルー役も担当している。
宮水一葉|声優:市原悦子
宮水一葉の基本情報
三葉の祖母。娘の二葉を病気で失った後、何故か三葉と四葉を置いて神社を出た婿養子に変わって二人を育てている。
「君の名は」の本編中、なにやら意味ありげな台詞をいくつも披露してくれた:
- わしらの組紐にはな、糸守千年の歴史が刻まれとる。
- 糸を繋げることもムスビ、人を繋げることもムスビ、時間が流れることもムスビ、ぜんぶ、神様の力や。
- よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それがムスビ。それが時間。
- (口噛み酒を)御神体に、お供えするんやさ。それはあんたらの半分やからなあ。
- あんた今、夢を見とるなぁ?
- わしも少女の頃、不思議な夢をみとった覚えがある。
- 大事しないよ。夢は、目覚めればいつか消える。わしにも、あんたのお母さんにも、そんな時期があったで。
・・・おい、一葉ばあちゃん。あんた実は全部知っとっただろ!何も状況がわかっていない人間が、どう考えても自分の孫としか思えない対象が完全に目が覚めている状態で「あんた今、夢を見とるなぁ?」なんて言うか?
これは間違いなく状況を掌握している人間が小出しにヒントを出しているとしか思えない。「君の名は」の顛末を決定的にしたのは「あんたらの半分やからなあ。」だろうか。この一言によって瀧は三葉再び会うための最後の賭けにでることができたのである。
そして「わしにも、あんたのお母さんにも、そんな時期があったで。」という言葉から、一葉おばあちゃん、二葉お母さんのどちらもかつて「入れ替わり」を経験していたということになるだろう。では、一体誰と?
それについては以下の記事(のおまけ)にまとめている:
一葉ばあちゃんの過去にはどんな「君の名は」があったのだろうか?
声優の市原悦子さん
声を担当したのは俳お市原悦子さん。残念ながら2019年になくなってしまったが、私の世代なら多くの映像作品でその姿を見たと思う。
声優としてはやはり「まんが日本昔ばなし」であろう。市原悦子さんと常田富士男さんの声がなければあれほどまでに我々の心に「まんが日本昔ばなし」は残らなかったに違いない。奇跡的な親和性だった。
宮水トシキ|声優:てらそままさき
宮水俊樹の基本情報
三葉の父で糸守町の町長。
「君の名は」のラストで登場する新聞や雑誌の文章を見ると、彼がかつて民俗学者であったことが分かる。
三葉の母とのであいは「君の名は」本編中では描かれてはいないが、想像するに、民俗学者としてのフィールドワークで糸守町に訪れた時に出会ったのではないだろうか。
しかしこの男、「君の名は」のキーパーソンでありながらどうにも不可思議な男である。本編中で描かれた彼の不可思議な行動は以下の2つが挙げられるだろう:
- 二葉を病気で亡くした後に、娘たちとの生活を捨ててまで政治の道に進んだこと。
- 最初は「妄言」として一蹴した町民避難の訴えを、何故か二度目には受け入れていること。
この不可思議な行動に関しては以下の記事に個人的に考えたことをまとめている:
皆さんはどのように考えるだろうか?
声優のてらそままさきさん
声を担当したのは、声優、俳優のてらそままさきさん。アニメの声優としては「シュタインズゲート」の天王寺裕吾(ミスターブラウン)、「ゴールデンカムイ」のキロランケなど、多くの作品で声を担当している。
私と同世代の人なら忘れてならないのが「仮面ライダーBLACK」のシャードームーンの声を担当していることも忘れてはならない。
宮水二葉|声優:大原さやか
宮水二葉の基本情報
三葉の母。「君の名は」本編では瀧が見た過去のシーンでわずかに登場するのみである、夫のトシキには酷く愛されていたようだ。
そして・・・一葉おばあちゃんが三葉(瀧)に語った「あんたのお母さんにも、そんな時期があったで」ということばを鑑みると、どうやら二葉お母さんもかつて誰かと入れ替わっていたということになるのだろう。それについても以下の記事にまとめている:
一体誰と入れ替わっていたのだろうか?
声優の大原さやかさん
声を担当したのは声優の大原さやかさん。多くの作品で声を担当しており、例えば「もやしもん」の長谷川遥、「メイドインアビス」のオーゼンも大原さんが担当している。
勅使河原克彦|声優:成田凌
勅使河原克彦の基本情報
三葉の同級生。雑誌「ムー」の愛読者にして機械オタク。
一葉や四葉ですら簡単には信じなかった「隕石衝突」を勅使河原はずいぶんと簡単に信じ、変電所爆破というとんでもない事件を発生させることを企んだ。
彼のこの行動には2つのことが起因していると思われる。一つは「現状」に対する破壊衝動であり、もう一つは三葉への恋心である。
彼は「君の名は」の本編中「普通にずっとこの町で暮らしてくんやと思うよ、俺は」と語っているが、あの物悲しい雰囲気を見ればこれが大嘘であることは明らかだろう。
建設会社の社長の長男として生まれ、自分が会社を継ぐことになるであろうことはなんとなく覚悟はしているが、別にそれを肯定しているわけでもない。しかし、それとは違う道を切り開く力が自分にないことも理解しているので、彼は大人しく「跡継ぎ」でい続けている。
そんなところに転がり込んできた「隕石衝突」という「都合のいい理由」を用いて、彼は隠し続けていた破壊衝動を爆発させたのだろう。
また、それが明確に分かるようには描かれていないが、勅使河原は三葉に密かに恋をしていた。これは絵コンテでも確認できるし、Blu-rayの特典についてきた冊子でも新海監督本人から語られている。その思いも間違いなく原動力になった。
勅使河原は基本的には明るくコミカルな人物として描かれているが、きちんと青春の悩みのなかにあっということになる。
上述した冊子の中で新海誠監督は一番思い入れのあるキャラクターとして勅使河原を上げている。彼が作品の中に埋もれない力強さをもっているのは新海監督が「のっかっている」からかもしれない。
声優の成田凌
声を担当したのは俳優の成田凌さん。アニメの声優としては「竜とそばかすの姫」で久武忍を担当している。
名取早耶香|声優:悠木碧
名取早耶香の基本情報
三葉の同級生。勅使河原が密かに三葉に思いを寄せていたように、早耶香も勅使河原に思いを寄せていた。
「君の名は」本編序盤で三葉の口噛み酒について「神様嬉しいんかなぁ。あんな酒もらって」と語ったのは、彼女なりに勅使河原をためしたのだろうし、三葉に対するわずかな意地悪だったのかもしれない。
そういった微妙な気持ちに気づきもせずに「そら嬉しいやろ」と答えた勅使河原はアホである。
ただ、ラストを見るとどうやら二人は婚約しているようなので「結果良ければ全て良し」ということで良いのだろう。
声優の悠木碧
声を担当したのは声優の悠木碧さん。数多くの作品で主要人物の声を担当しており、「魔法少女まどか☆マギカ」の鹿目まどか、「ワンパンマン」の戦慄のタツマキも悠木碧さんの声である。
ユキちゃん先生|声優:花澤香菜
ユキちゃん先生の基本情報
三葉の高校の古典の教師。「言の葉の庭」のヒロインであった雪野百香里、本人である。
時系列的には雪野は本来東京にいなければならないので「別の世界線の雪野」ということになるのだろう。
「君の名は」に雪野が登場することに関して、Blu-rayの特典冊子の中で「これまでの作品ファンのための秘密のプレゼントのようなもの」と新海監督は語っている。
声優の花澤香菜
声を担当したのは声優の花澤香菜さん。非常に多くの作品で声を担当しており、どのアニメを見ても必ず誰かの声を担当しているような気がする声優さんである。
個人的には「シュタインズゲート」の椎名まゆりが非常に印象的だったが、「物語シリーズ」の千石撫子、「デュラララ!!」の園原杏里、「グレイプニル」の青木江麗奈などなどなどなど、数えればキリがないほど主要人物の声を担当している。
奥寺ミキ|声優:長澤まさみ
奥寺ミキの基本情報
瀧のバイト先の先輩。非常に美人でバイト先の男どもは全員思いを寄せているようだった。
瀧本人も奥寺先輩に思いを寄せていた。
「君の名は」本編の終盤左手の薬指に指輪をはめているが、瀧の友人の司と婚約したという裏設定があることが映画パンフレットの中で新海監督本人から語られている。
声優の長澤まさみ
声を担当したのは俳優の長澤まさみさん。多くのテレビドラマや映画で主役を務めている。個人的には「コンフィデンスマンJP」は好きなシリーズ作品である。
声優としては「コクリコ坂から」の松崎海、「SING(シング)」のアッシュの声を担当している。
藤井司|声優:島崎信長
藤井司の基本情報
瀧の同級生。メガネを掛けた知性派な雰囲気を持つ人物だが、瀧を心配して「三葉探しの旅」に付き合ってくれるくらい友だちがいのある人物である・・・ようにも見えるが、結局瀧を出汁にして奥寺先輩との旅行を実現したとんでもないやつというのが真実であろう。
ただ、高校卒業後にも瀧との人間関係は続いたようなのでいいヤツであることに違いはないとは思われる。
声優の島崎信長
声を担当したのは声優の島崎信長さん。数多くの作品で主要人物の声を担当しており、「ダイヤのA」の降谷暁、「斉木楠雄のΨ難」の海藤瞬、「刃牙シリーズ」の範馬刃牙も島崎さんによる。
高木真太|声優:石川界人
高木真太の基本情報
瀧の同級生。見るからに「仲間思い」といった雰囲気があるが、実際、瀧が「三葉探しの旅」をしている最中にバイトを変わってあげている。瀧は友達選びについては天才的な才覚を持っていると言わざるをえないだろう。
声優の石川界人
声を担当したのは声優の石川界人さん。多くの作品で声を担当しているのだが、何故か私が見ているものは少ない。私が見ていた作品では「ワンパンマン」のジェノス、「サクラダリセット」の浅井ケイ、「銀河英雄伝説 Die Neue These」のダスティ・アッテンボローの声を担当していた。
その他の登場人物
瀧の父|声優:井上和彦
「君の名は」本編では一度しか登場しないが、どうやら瀧と二人で暮らしているようである。映画パンフレットによると「数年前に離婚した」ということになっている。
声を担当したのは声優の井上和彦さん。70年代から多くのダク品で声を担当している。おそらく私が初めて声を聞いたのは「銀河英雄伝説」のダスティ・アッテンボローだったと思う。それ以外にも、「サイボーグ009」の島村ジョー、「蒼き流星SPTレイズナー」のアルバトロ・ナル・エイジ・アスカ、「機動戦士Zガンダム」のジェリドメサ、「タッチ」の新田明男、「NARUTO」のはたけカカシなど主役を含む有名な主要な登場人物の声を担当している。
また、「雲のむこう、約束の場所」の富澤常夫、「星を追う子ども」の森崎竜司の声を担当している。
勅使河原の父|声優:茶風林
なんとも頑固そうな人物で、勅使河原建設の社長である。息子を跡継ぎとして鍛え上げたいと思っているようだが、勅使河原本人はそれを単純に受け入れているわけではない。
「君の名は」の後半で、瀧が隕石衝突による死者名簿を読んでいるシーンがある。その名簿は「あいうえお順」になっているのだが「勅使河原克彦」前後には勅使河原姓の人物の名前がない。つまり・・・勅使河原の両親は隕石衝突を生き延びている。
勅使河原の両親にとって隕石衝突事件は自らの命では無く、掛け替えのない息子の命を奪った事件だったことになる。「君の名は」本編中最も大きな心の傷を負った人物達ということができるだろう。
声を担当したのは声優の茶風林(ちゃふうりん)さん。80年代から声優として活躍しており、「ちびまる子ちゃん」の永沢くんの声で覚えている人も多いのではないだろうか。それ以外にも「名探偵コナン」の目暮警部、「サザエさん」の磯野波平(2014年から、2代目)などの有名なキャラクターの声を担当している。
勅使河原の母|声優:かとう有花
「君の名は」本編中一瞬しか登場しない。一体どんな人物だったのだろうか?
声を担当したのは声優のかとう有花さん。主に海外ドラマや映画の吹替を担当している。「君の名は」では方言の監修も行っている。
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